農業は芸術だ！ 経営主は芸術家。

　農業は芸術だ！
　というキャッチコピーは、けっこういろいろなところで言われています。

　農作業の合間には、ときとして、さまざまな芸術的風景が現れます。

　◯１ヘクタールの広い畑に、えんえんと畝がた立っている

　◯朝もやのなか、何十本ものキュウリのツルが、空に手を伸ばしている

　◯発芽したコマツ菜の双葉が、細い緑の線に成って、何本も・・・

　こうした、自然と人の作業の合作ともいえるような情景をふと見る時、農業っていい仕事だなぁ、とフト癒される気持ちになります・・・・・掛け買いした種代の支払いのことを思い出すまでのわずかな間に。

　経営主の仕事の技が芸術的で、見てるとうっとりすることもあります

　◯先輩が、どう見てももう終了した方がいいとしか思えないぼろぼろのキュウリを、２０日間で蘇らせ、もうひと山収穫した時

　◯雨続きで定植がおくれている。先輩はずっとパチンコに行っていたが、半日だけ晴れた昨日の午後、全ての定植を終わらせてしまった！　そして今日はまた雨でパチンコに。
　
　◯ナスの誘因が早い！　とにかく早い！

　とくにハウスでやる野菜とか花など、いわゆる施設園芸の経営主は、芸術家の雰囲気を持っている人が多いと思います。いくら情報を集めても、理屈はけっきょく理屈なので、感覚に頼ってやる仕事が多いですから、自然と感覚的なタイプになっていくんでしょうか。人生に対する考え方も、楽しければいいじゃん、みたいな楽観的な感じの人が多いです。自営業ですから、悲観的になったらやってらんないですけど。
　（いちお経営主が男ってことで話すすめますね）
　経営主が芸術家なら、その奥さんはいわゆる芸人さんの妻とかミュージシャンの妻ってことです。芸のためなら〜ってことで、ダンナをたてますが、陰でこっそりタンスの着物を質に入れたり、じゃないですけど、結局奥さんが、パートに出たり介護ヘルパーさんになって、家計をなんとかしてるってことも多いです。（ウチの話かよ）　新規就農ってプロの芸人とかミュージシャン目指すような感じと、似てるんじゃないでしょうか。

農業に対するカンチガイ

　多くの人がカンチガイしてると思います。

「 自分に農業ができるかなぁ〜？（ムリムリ）」

いや、実は、農業は、誰でもできるんです。

　農業は「できる？できない？」というものではなく「やるか？やらないか？」なんです。


　「農業には特別な技術が必要だよね、技術の習得が難しいのでは・・・自分にはムリムリ」

　もし、そう思っている人がいたら、それはカンチガイです。
　確かに、ある程度の技術を学ぶ必要はあります。でも、その技術を習得する方法は、お金もかからなければ、学校に行く必要もありません。とにかく現場で農業を初めてしまえば、仕事が仕事を教えてくれます。周囲の先輩を見よう見まねでやっているうちに、そこそこの農業生産ができるようになるのです。
　他産業では生産のための技術は企業秘密なのでしょうが、農業生産の基本技術は、原則、公開されています。ある意味、国民の共有財産のようなものです。食糧生産なので、生産技術が出し惜しみされても、最後はみんなが困るからです。
　ですから、最低限の技術は、とりあえず心配いりません。現場に行けば、先輩農家や指導にあたる農協や役所の人が、タダでいくらでも教えてくれます。WEBや雑誌にもいろんな情報があります。基本技術に従ってやっていけば、最低限の生産は、できてしまうものです。


　「農業って体力勝負だよね、自分にできるかなぁ・・・」

　性別や年齢や自分の体力に自信がなくて、はじめから農業をあきらめている人がいれば、それはカンチガイです。
　今の農業は、基本的に機械がやるので、他の職業に比べて農業が特に体力を使うということではありません。
　農業は、受け皿が大きいというか、懐が深いです。一口に農業と言っても、いろんなスタイルがあるのです。自分の体力にあった、それなりの作物や栽培方法があるはずです。
　昔読んだ就農本に「農業やるなら腕立て伏せ１００回！」みたいなことが書いてありましたが、そんなのはナンセンスです（笑）
　腕立て伏せ５回の人でも、できる農業は、必ずあります。


　「農業ってお金にならないんでしょ、やりたくても生活できなきゃなぁ・・・」　

　経済的な心配から、農業に踏み込めない人がいたとしたら、それもカンチガイかもしれません。
　まず、農業をビジネスとしてとらえ、作物生産だけではなく「売ること」をビシッとやれば、きちんと生活できます。人によっては「大儲け」できます。もちろん、この場合は、農業とは別に、ビジネスの技術がある程度必要になってきます。
　また、作物や産地の選び方しだいでは、そこそこ喰っていけるフツウの営農モデルというものがあります。ビジネスまでしてハデに農業をやりたくないという人でも、なんとかなります。地味なフツウの農業でも、ぎりぎり生活していくことは、就農する産地や始める作物をきちっと見極めさえすれば、可能なのです。
　
　こうしてみると、農業は誰でもできそうな気がしてきませんか？

　やるやらないは別にして、少しでも農業に興味のある人は、一度まじめに検討してみてはいかがでしょう。
　もちろん一筋縄ではいかないので、即決はしないでください（笑）。

　いずれにせよ、これといった検討もせずに、カンチガイで、はじめから農業をアキラメテしまっているとしたら、それは、とてももったいないことなのです。