|農業|田舎|事典[ほ] 補助事業「トクしているのはだれ？」

補助事業　ほじょじぎょう

　農家は様々なところで、国庫からの補助金をいただいている。
　都市に比べると民間よりも公共のインフラ整備の割合いが高いこと、人口ひとりあたりの税金投入額が都市より格段に高いことなどから、どうしても補助金がばらまかれているようなイメージがある。人口が少ない割に面積が広いんだから国土の維持に金かかるのはどうしようもないことだ。田舎は補助金でトクしてるという都会人の指摘は当たらないと思う。
　農家への補助金が、農家を甘やかし、経営感覚を麻痺させてるなんて大げさな意見もあるが、補助金でほんとうに利益を得ているのは誰なのか？よく考えてみよう。

　事業額がとくに大きいのは農村整備事業だろう。土地改良の面整備（田畑を大型区画に再整備すること）や灌漑設備（水道や溜め池）だ。
　農業生産のインフラ整備ともいえる土地改良事業をすると、農家の自己負担額（賦課金）もけっこうかかる。１０アールで年間１万円を２０年くらい払いつづけることもある。１０アールあたり２０万円の経費があれば、自分で建機を借りてきて自己流で土地改良できるはずだ。
　土地改良事業には、自己負担額の何倍も補助金がついているわけだから、総事業費は、１ヘクタールで１千万とかになる。土地改良事業での、最大の受益者は、この土地改良工事を請け負った土木業者と、農家から金利をとれる農協や農林金融公庫である。

　
　また、ビニールハウスを導入する補助事業の例をみてみよう。
　ハウスの場合は、国と県の補助を合わせると、事業額の半額を補助してもらえる場合がある。たとえば総事業費５００万の見積もりなら、２５０万だけが自己負担額となるのだ。
　さて，問題は誰が５００万と見積るか？だ。何故か補助事業の時は、農協が指定する業者の見積もりでないと困る、という話になる。たぶん法的根拠はないし、むしろ違法行為じゃないかと思うのだが、なんだかんだ言われて、指定業者の見積もりなる。
　指定業者にたよらず自分で安い鋼材を調達して自分で建てると、指定業者見積もりの半額の２５０万でハウスは作れるのである。２５０万の差が，指定業者の儲けで、その差額は補助金から出てるのだ。
　要するに、補助事業を入れて、得するのは、農協系列の指定業者であって、農家ではないということ。農家への補助金は、農家ではなく、農業関連の人々を養うために活用されているのだ。

　このように、農業があるからこそ田舎にまわってくるお金があるわけだが、できれば、税金だけではなく、農業業界が自力でお金を引き寄せたいものだ。



[参照]→農村整備事業の国民的意義