|農業|田舎|事典[ぬ] ぬか 「ぬかと微生物」

ぬか　糠　ヌカ

　玄米を精米したカスのこと。カスはカスだが、ヌカを捨てる人もいないだろう。ヌカ床に使うだけではなく、田畑の肥料として重宝し、家畜の飼料としても使える。
　「ぬかよろこび」なんて悪いイメージもかつてはあったヌカである。地域によっては「田畑にヌカを入れるな！」と古くから言われているところもあるらしい。
　実際、私も農業１年生の頃、よかれと思って他の肥料と一緒にヌカを畑に入れたら、土がとてつもなく臭くなってしまった。ようするに、ヌカで腐敗菌を繁殖させてしまったのだ。

　ヌカは、肥料というよりは、微生物のエサである。悪い菌（腐敗菌）も良い菌（発酵菌）も、どちらのエサにもなる。

　ただそのまま、ナマのヌカを畑にうないこんでも、ほとんどの場合、腐敗菌を増やしてしまう。その直後に種を撒いても発芽しなかったり、苗も腐って枯れたりする。そんな使い方なら、入れないほうが１００倍マシだ。
　やはり、ヌカは一回、発酵させてから使うべきだ。簡易好気性菌ボカシ肥料という感じで、水分調整して積み込み、１〜２回、切り返すだけでよい。生ヌカとは全く違う、質感と香りのボカシぬかになる。ほんとうに微生物というのは不思議なものだ。菌は特に入れなくても積み込み中に自然につくようだ。念のため、裏山の腐葉土を軽く混ぜといてもいい。まあまあ手間がかかるのだが、これさせやっておけば、腐敗菌ではなく発酵菌が増えてくる確率が格段に増す。
　ヌカと嫌気性微生物を混ぜて、密封して乳酸発酵させる方法もある。案外、上記の方法より手間はかかるが、漬け物のヌカ床のことを考えてもわかるように、ヌカと嫌気性微生物の相性は、ばっちりなのである。