|農業|田舎|事典[ま] マルチング [技術]

マルチング　mulching　マルチ

　土の土壌水分や温度を適度に保持・調整するために、土の表面を有機物などで覆う。これをマルチング（mulching）という。略してマルチ。マルチメディアやマルチプレイヤーのマルチ（multi）とは違う単語。
　
　里山の土の表面は、落ち葉や枯枝やらで覆われている。落ち葉は土の表面の湿度を保ち、落葉と土の間では、虫や微生物が盛んに有機物を分解する。そこは、正しい土の匂いがする有機肥料製造工場だ。自然のマルチングの下で、土の表面から自然に耕されていくのだ。
　畑でこれを再現するのが、藁や落ち葉や堆肥を使った有機物マルチだ。果樹園では、草生栽培にしてモアーをかければ、有機物マルチを自給できる。しかし、毎作、耕してから作物を作る畑作では、全面をマルチするだけの有機物を、とてもじゃないが確保できない。
　そこで、登場するのがビニールマルチだ。ビニールマルチは機械で設置もできるし、何しろ草が生えない。結局コストも安くつく。ビニールマルチをした畑は、いかにも近代的で、土まみれにならずに働ける。ビニルマルチには虫避け効果のあるシルバーマルチもあり便利だ。がしかし、ビニーマルチは、実は、土壌水分や温度を適度に「調整」するというマルチ本来の目的が弱い。どうしても、地温を上げすぎたり，過湿になったりするのだ。そして最大の欠点は、使い終わったら、大量のゴミになることだ。
　注目は、次世代のマルチ「紙マルチ」だ。古紙で作られる有機物マルチである。紙なので通気性があり、土の加湿や過高温が避けられる。機械でも設置できるようになってきた。そして、片付けないで、そのまま畑にすき込める。欠点は、価格が高いこと。誰もがビニルマルチ並みの値段に下ることを待っているが、待っていてなかなか買わないので、値段がなかなか下がらない膠着状態になっている。

　ところで、ある篤農家は、晩秋の２ヶ月間、毎日裏山に入り、落ち葉を集め続け、それをハウスのマルチングに使うという。最高の土ができるのだろう。そんな農業を理想にしているのだが、目先のことを考えて結局格安ビニルマルチを毎年使ってしまうのである。

[参照]→「農材ドットコム：生分解性マルチ」